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嘘で固めてサヨナラを

「愛しているよ」




そう言って触れる手は優しく、何かを丸ごと奪っていってしまいそうな感覚に囚われる。

彼には似合わない触れ方が、怖い。

横暴で少し強引な方が彼らしい。せり上がる不安が胸を震わせる。




「ずっと、愛している」




甘い言葉は冷え冷えと悲しい響きを持ち、自然眉が寄ってしまう。




「…どうしたの」

「なにがだ?」

「、わからないけど」




明確な理由が見つけられない。

聞けば何かが返ってくると思った。目を伏せる。




「…悲しい」




呟いた言葉は確かに相手に届いた。

ぴくりと反応する彼の指先。




「そんなことはない、私はいつもと同じだ」




細まる瞳が有無を言わさない。

何も言えずにいると、気だるげに、それこそいつもと変わらない微笑を浮かべ頬を撫でられた。




「私はいつもと変わらない。いつもと変わらず君を愛している」




愛しげな仕草に偽りはない。

偽りではないが、真実でもない。

彼は続ける。




「幾年が過ぎようとも、君を愛している。悲しい事なんてなにもない、…約束しよう」




優しく優しく優しく。

触れて何もかも誤魔化そうとする。

真実なんて、ひとつもない。






「愛しているよ、ずっと」






瞳を閉じて温もりだけ。

深く暗く赤く。

この世界でいつかの話。









彼は誰かに殺されるのだ。










e.


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